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戦姫絶唱シンフォギアXV リレー連載 第7回

風鳴 翼役 水樹 奈々

スタッフ&キャスト陣によるリレー連載第7回のゲストは、風鳴 翼役の水樹 奈々さんです。
序盤から過酷な状況に見舞われてきた翼ですが、第9話ではさらなる試練に晒されました。水樹さんはそんな翼に何を思ったのか、たっぷり語っていただきます!

――翼は序盤からかなり重い展開に見舞われましたね。

水樹 第1期第1話のライブで起きた惨劇、あの光景がこんなにもシンクロする事件が起きるなんて、「金子さんの意地悪!」って思いました(笑)。後輩の背中を優しく押せる頼もしい先輩に成長してきたと思っていたのに、またトラウマを抉られてしまって。第5期にしてこんな試練を与えられてこの先どうなるんだろうって心配になりましたし、役作りというところで私もまた試練を与えられることになるんだろうなと覚悟しました。

――お芝居に関して何かリクエストされたことはありましたか?

水樹 第2話で刻印されたあとの暴走は、金子(彰史)さんと音響監督さんから「普段の戦闘とは落差をつけてほしい」というリクエストをいただきました。その時点で、この先、心の弱さがいろんな場面で見え隠れすることも伺っていたので、刻印発動した後はいつもの凜とした言い回しとは違う、声色も少し揺らぎのある高めのニュアンスを出せたらいいなと考えていました。ただ、『AXZ』は“完全体翼”と思って演じていたので、それをどこまで崩すかの塩梅が難しかったです。

――翼は第2話で起きたライブの惨劇をその後もだいぶ引きずりましたね。

水樹 守るべき人々を救えなかったことに強く責任を感じてしまって、自分を追い込み、さらに視野が狭くなっていきました。翼は昔から失敗を引きずりやすくて、立ち直るまで時間がかかる子なんです。一途で一直線な猪突猛進型だから、一度焦点が当たってしまうとそのことしか考えられなくなってしまうんですよね。シリーズを経て成長したように見えても、やっぱり人ってそう簡単には変われないと思いましたし、でもそれはある意味で人間らしい、リアリティのある描き方をされていると感じました。

――第5話では判断を不慣れなオペレーターに委ねるなど、状況が悪い方向へ流れていきました。

水樹 仲間たちと手を取り合ったり、いい意味で頼れるようになったりしましたけど、自分の責任は自分で取るという思いが強いあまり、仲間に迷惑をかけたくないと意固地になってしまって。第1期の頃の一人で抱え込んでいたときとはまた違う形での暴走でした。責任感の強さゆえ、仲間を想うがゆえに行動していたことが、全部悪い方向に出てしまいました。

――しかも、その直後に調と切歌に当たっていましたね……。

水樹 自分がついていながら、未来とエルフナインがさらわれてしまった。全部が負の連鎖になっていく状況への苛立ち、自分自身への苛立ちを募らせた結果、後輩に突っかかってしまう……。ここまで子ども返りをしてしまうのかとちょっと悲しくなりましたし、「しっかりしなさい!」ってお尻ペンペンしたくなりました(笑)。

きっと、大人になったからこそ無様な姿は見せられないという気持ちが強くなって、素直にごめんなさいと言えず、反発するという行動に出てしまったのかなと思います。責任感を持って頑張ってきたからこそ、結果がついてこなくて素直になれなくなる。失敗を認めると自分が経験してきたこともプライドも全部が崩れそうになる不安って、大人になればなるほど増えると思うんです。それが突っかかるという態度に繋がったのかなと思いました。

――訃堂に刻印されたのも大きかったと思います。

水樹 単純に状況判断が悪かったとか、敵に翻弄されたというだけではなくて、大きな要因としておじいさま(訃堂)の力によって自分自身をコントロールできなかった部分もあると思います。でも、響に同じ術をかけても効かなかったということは、やっぱり翼にはどこか心の隙があったなんですよね。ライブでの惨劇を見せられ、心がぐらついたところを狙われてしまい、更に確執のあるおじいさまの発言で迷いが生じて、そこを利用されて…。第9話でおじいさまのもとに行ったのは、半分は操られていましたけど、半分は自らの意志で起こした行動なのかなと思います。

――この国を守るという意志は訃堂のもとへ行っても変わりませんでしたからね。

水樹 そうなんです。装者のみんなとは共闘できないけれど、おじいさまのもとへ行けばきっとこの国を守ることができる…自分自身のやり方で国を守るという道を選んだ。仲間に迷惑をかけた気持ち、防人としての使命、風鳴の血……たぶんいろんな思いが入り交じっていたんだと思います。演じる際も、完全に操られて行動しているのではなくて、複雑な思いを抱え揺れ動いていることが表現できたらいいなと考えていました。

――訃堂側についた翼を一喝したのがマリアでした。

水樹 第2話のライブ前のシーンでは、マリアに私が引っ張っていってあげるという態度を見せておきながら、こんなことになって本当に申し訳なかったです!(笑) 改めて、「マリアに出会えてよかったね、翼」と思いました。やっぱり翼はどこかで奏を求めていて。でも、まわりにいるのは後輩がほとんどでそんな甘えや弱さは絶対に出せない。その中で唯一、身を委ねられるのが翼と同じように突っ走り、挫折を経験したマリアなんです。あのときのマリアには聞き分けのない妹を一喝するお姉ちゃんのような包容力を感じました。

――あの会話のやりとりを見て、マリアは翼のことをちゃんと理解しているんだなと思いました。

水樹 ただ強い言葉をぶつけるのではなく、翼の弱さに向き合った温かい言葉をかけてくれたのが嬉しかったですね。一人の人間としてちゃんと話し合ってくれたからこそ、翼も心を開くことができたんだと思います。

――そして、第9話は翼を庇って八紘が犠牲になるという衝撃的な展開となりました。

水樹 また翼から大切なものが奪われてしまって。ここでも「金子さん、なんてひどいことを!」と思いました(笑)。親友に続いて、お父さんまでいなくなってしまうのかと……。今回の翼のキャラクターソング『Defender'Z Brand!』の歌詞が、物凄く心に刺さりました。第9話で歌ったのは2コーラス目で、まさに翼と八紘さんのことを歌っています。先にシナリオを読んでいたので、この展開を頭に入れながらのレコーディングになったんですが、アフレコ現場ではより翼の言葉として感情が爆発しました。ぜひ歌詞も併せて注目していただきたいです!第9話のストーリーと完全にシンクロしているので、より味わい深いものになると思います。

――訃堂と戦う翼の気迫もすさまじいものがありました。

水樹 この先、ラスボスとの戦いが待っていますが、おじいさまとの戦いは翼にとってある意味ラスボス以上の死闘になると思ったんです。第9話の『Defender'Z Brand!』は、これまでの翼では考えられないアクションメインの歌唱になっています。特にアマルガムの封印を解いたあとは、歌も台詞もほぼ絶叫状態(笑)。喉から血が出るかと思いました!(笑)幼い頃から鍛え抜いてきた翼は、他のキャラクターよりも戦闘時のブレが少なく、メロから外れることなく歌うという決まりがあったので、初めて豪快に、まさに絶唱できて、シンフォギアを心身ともに感じたアフレコでした!!

――今後の翼はどんな戦いを見せてくれるのでしょうか?

水樹 大きな犠牲を払うことになりましたが、ここから防人として戦う、守るということだけではなく、自分が自分であるためにどうすればいいか、その方法を見つけていくことになります。翼が本当の防人になるための戦いが始まるので、ぜひ注目していただけたら嬉しいです!

――翼以外の部分で第10話以降の見どころや期待してほしいことなど教えていただけますか?

水樹 響と未来にはとにかく幸せでいてほしいので、私たちはシェム・ハを全力で止めにかかります! しかも、第10話という後半も後半なのに、ここからさらにお話が広がっていくんです。毎話クライマックスというド派手な『XV』ですが(笑)、それ以上の盛り上がりを見せていくのでご期待ください!

◆コラム◆

演じているキャラクターを漢字一文字で表すと?(キャラクターの名前以外で)

何に対しても真っ直ぐ、でも素直になれない。第1期から変わらない、翼の強さと弱さを象徴する言葉だと思います。